どうも、ギター弾きからDTMerになった萩原悠です!
そんなわたしにぴったりすぎるクリニックがありまして、ちゃっかり参加してきました!
Pete Thorn氏によるモダンギタリストのためのレコーディング&プロダクションクリニック!
めちゃめちゃ楽しかったのでレポートを書いておこうと思います。
「行きたいけど行けなかった!」
って方もいるかと思いますので、ピート氏のありがたいお話とかを出来る限り書き起こします!
Pete Thorn氏とは
プロのギタリストとして世界中で活躍する傍ら、YouTubeへの動画投稿にも力を入れている技巧派ギタリストであるアメリカのPete Thorn(ピート・ソーン)さん。
Suhrからシグネイチャーモデルのギターとアンプもリリースしている彼が、
今回は日本のSuhr代理店であるオカダインターナショナルさんの企画でクリニックをやってくれるということに!
ギタリストによるクリニックだからてっきり
「速く弾くには地道な練習しかないんだ」
「実は右手が重要なんだ」
みたいなギターのお話がメインなのかと思ったら!
今回はレコーディングとプロダクションについてのクリニックとのこと!
めっちゃ面白そうじゃないですか!
会場はKIWA TENNOZというオシャレなライブハウス。
ってことで参加して来ました。
クリニックレポート
それでは、ここからがクリニックの内容です!
やってくれたこと、言ってくれたことをしっかりまとめていきますね!
登場!
開始時間である19時の8分前、
特にBGMを煽ったりすることなくフラリとPete本人がステージに登場。
おもむろにギターを持って、アンプに繋がずにピロピロと指慣らし。
からの、突然スマホを取り出して、会場に座ってるわたしたちを写真でパシャリw
開演時間になったてようやく出て来るでもなく!
とりあえず大音量でギター鳴らすでもなく!
時間前に入って静かにウォーミングアップ&ファンサービス!
もうこの瞬間から人柄の良さが出てるなぁ。
そんな自由で温かいを作ったところで、19時のオンタイムでイベントスタート。
「ヨウコソ!!ニホンゴスコシシャベレマス。」
可愛いww
そしてここからは通訳さんを通して、
まず始めにこんなお話をしてくれました。
「今日はどうもありがとう。オカダインターナショナルの人も、Suhrの人も、来てくれたみんなも、皆さんのお陰でこんな素敵なイベントができてます。」
「みんなは僕のことをYouTubeで知った人が多いと思う。
YouTubeのおかげでこうして日本の方にも知ってもらえて、こうして東京でイベントもできている。
でも始めること自体はそんなに難しいことじゃなくて、今日はみんなも自分でも出来るかもと思って帰ってもらいたいんだ。」
すごい謙虚で、親しみやすい!
もう、好き!!!
ではクリニックスタートです。
前半は機材のお話
まずはご自身が普段から使ってて、この日のクリニックでも持って来ている機材の紹介から。
シグネイチャーギター
最初に紹介されたのはSuhrよりリリースされているご本人のシグネイチャーモデルのギター。
指板がローズウッドであとはマホガニーだよってお話や、
昔はフロイドローズのブリッジを使ってたけど面倒でやめちゃって以来、
ウィルキンソンのブリッジに変更したらめちゃめちゃ楽でチューニングも狂わないから気に入ってるというお話。
一番面白かったのはピックアップのお話で、
オリジナルのThornBuckerというモデルは意外にも出力低め。
昔ながらのハードロックなんかが好きなのになんでだろうと思ったら、
「70年代はそんなに歪むアンプもなかったしましてやオーバードライブやディストーションもなかった。
だからピックアップでできるだけ出力を稼いでたんだけど、今は歪ませたいならそういうアンプを使うなりエフェクターをひとつかますなりすればいいだけ。
元の時点で歪んじゃうよりも扱いやすい。」
ということでした。
なんというか、すごく柔軟な考え方!
「AC/DCの音が出ないといやだ!」
とか言いながら全部の機材を当時と同じにしようとはせず、
今の時代にあった音作りで利便性とのバランスを取っている。
YouTuberとしての成功してるのもこういったクレバーな考え方があるからなんだろうなと思いました。
シグネイチャーアンプPT15
続いてはアンプ。
この日のクリニックで使ったアンプはなんと15wという小さめアンプ!
よく見るマーシャルのアンプが100wで、
自宅練習用のアンプなんかが10wとかだから、
この15wってのが如何に小さいか……
でもなにこれめっちゃいい音!
出力を抑えても迫力は全く損なわれていない!
素晴らしいアンプ!
実際最後の質問コーナーで
「色々試奏とかレビューとかして、特にお気に入りのアンプはなんですか?」
という質問が来たのに対して
「んー(←2秒) 俺のPT15!」
ってすぐに言ってましたww
中盤は実際に1曲レコーディング
さてメインパートですね。
今回はプランニングからレコーディング、完成までを追ってのクリニックということで、
実際に目の前で全行程やってくれました!
(時間削減のためちょいちょい事前に録っておいたデータも使ったけど)
ネタ作り
まずは面白いフレーズ、リフ、音楽のアイディアを考えるところから。
のちのQ&Aコーナーでも話してくれましたが、
「まずはギターを置くことだね!散歩してるときやシャワー浴びてるときに思いついて、すぐにスマホのボイスメモに入れるんだ。」
とのこと。
実際にスマホに録音した口ギターの
「んてれってれれてってれーダダダダー」
という音声も聴かせてくれました。
「思いついたリフとかメロディ、後で絶対思い出せると思っても絶対忘れるでしょ?だから録音するんだ。」
激しく頷いたわぁぁ。
ドラム
ドラムは基本的にTOONRACKのEZ Drummerを使っているそうです。
理由は、Easyだから。
とのこと。
たしかに、EZ Drummerはめちゃめちゃスピーディーに作れるからわたしもオススメ!
「ドラマー雇うより早いよね!ドラマーって……ホラ、気難しい人もいるしw」
だってさw
このEZ DrummerのTap to findというマッチング機能が便利で使ってるのこと。
作業の速い人は便利機能とかプリセットを抵抗なく使い倒すなぁ。
音楽家ってこだわりとかエゴとかがありすぎるとこういう機能はあえて使わなくなっちゃうんだけど(2流の人だけか?笑)、
ピートはとにかくこの機能もサッと使って最速でドラムトラックを完成させてました。
また、曲を面白くするためにフィルターやディレイなども積極的に使って、
ドラムも面白くするように心がけているとのこと。
ベース
ベースに関しては今回持ち込んでなくて、既に録音されてたのでお話だけ。
ピート本人もベースはそんなに得意ではないらしく、
むしろ弾くのが苦しいとのこと。
「昔はベースはギターと同等ではなく、まぁちょっとおまけくらいに捉えてたんだけど、やっぱりいい音楽を作るためにはベースにも魂込めて弾かないといけない。
だから大人しくルート弾きでいいやとかでなく、もっと気持ちを込めたプレイをするようにしてる。」</BLOCKQUOTE>
と言ってました。
また、ベースにディストーションをかけることによってギターと合わさったときにバンドのサウンドが大きくなるというのもポイントだそうです。
バッキングギター
ここからがギターのRECに関して。
最初に、スマホに入れた鼻歌音源をギターでどう弾くかを考えるところから。
今回は同じ鼻歌のフレーズからクリーンのカッティング風プレイとディストーション系プレイの2種類を作りましたが、
どちらも鼻歌を忠実に再現することよりも、そのモチーフを元に如何にカッコよくするかでフレーズもどんどん変化していきました。
また、基本的にはダブル、同じテイクを同じ音色で2回弾いて左右に振って厚みを出していました。
ちなみに、ダブルにするときに同じ音色で弾くのは分厚い壁を作りたいとき、
もっと鮮やかな音像にしたいときは片方がミッドブーストで片方がフルレンジなどで違いを持たせるそうです。
また、この時点でディストーションパートのリフをもっとスペシャルな感じにしたくてなったようで、
オクターブファズを使って更にユニゾンを重ねていました。
リードパート
今回はギターインストの曲なので、
リフだけでなくソロっぽいパートも用意されました。
ギターインストで大事にしていることを色々話してくれましたが、
まとめるとこんな感じ。
・如何に沢山詰め込まないか、シンプルにする
・拍の頭を抜くと力の抜けた感じになる
・始めはローフレットから弾いておくと後の盛り上がりしろを温存できる
いきなり頭から盛り上げちゃうのはよくない、耳に残るフレーズは隙間が空いていて、わかりやすいメロディだ、そんなお話でした。
それを体現するかのように、実際に目の前でRECしてくれました。
前半はテーマになる隙間多めフレーズ、
そして後半のソロ。
ソロはもう弾いちゃえとww
割とアドリブで感情に任せてウワーーと弾いて素晴らしいソロを聴かせてくれました!
(通訳さんに「今の完全アドリブ?」と突っ込まれて、「まぁ……ちょっと練習はしてきたよw」だそうです)
ちなみに、今回はバッキングもリードも全パート1発OKを出していましたが、
普段自宅では50テイクとかかけるらしい。
(プレイバックしたりチューニング直したりちょっと休憩したりもするから、1分のフレーズでも最低1時間ですよね)
それは、ひとりだと何回でも弾き直せるからと思ってダラダラしちゃって、
今回のようにオーディエンスがいたり、プロデューサーさんが近くにいたりするときはすごい集中力が出る。
本当は一人のときも一発OKが出るくらい集中したいんだけどね。
という人間らしいエピソードも頂きましたww
ちなみに、このソロで教えてくれた小技として、
ソロに普通につけるディレイの他に、フレーズの後半だけリバースディレイもかけるとのこと。
これはもうみんな今日から真似するだろうなw
ここまでやって、とりあえず曲は完成です!
ミックス
この先もしっかりやってくれるのが今回のクリニックの面白いところ!
自分のシグネイチャーアンプで音を作って録音したのに、
ミックスの時点で客観的にギターにもイコライザーをかけてカットしていました。
ポイントは主に2箇所。
・70Hz以下はバッサリカット!
・160〜250Hzあたりでオオオと聴こえる部分もカット
ということでした。
抜けが悪いから高音域をブーストしたくなっちゃうけど、
いらない低音をカットすることによってギターサウンドがかなりクリアになりますと。
また、このあとマスタリングとまでは言わないものの、マスタートラックにかけて完成音源をグッと持ち上げるためのプラグインも紹介してくれました。
・UADバンドルの中のSSL4000G Bus Compressor
・WAVES/Greg Wells Signature Seriesの中のMixCentric
・Slate DigitalのVirtual Tape Machine
・Slate DigitalのFG-X
どれも細かい使い方というより、
「これを通すと音がよくなるんだ!ホラ、オンオフするとこんな感じ!」
という感じでした。
このあたり、エンジニアになりたいわけでも宅録マニアになってるわけでもなく、
あくまで最速でいつも同じクオリティに音源を持って行くために使っているという感じでした。
実際WavesのGreg Wellsバンドルはめっちゃ便利で最近超安いので、
みんなも使ってみるといいですよ!
(「なにが行われてるかわからないけどこれを通すと音が良くなる」と一番説明が雑だったやつww)
で、ここまでした音源をFinal cutという動画編集ソフトに突っ込んで、色々編集してからYouTubeにアップする、というのがいつもの流れだそうです。
これでひとつのプロダクションが完成!
ここまでの流れ、実に1時間。
1分半程度の音源で事前に色々決めて来たとはいえ、こんなにサラッと仕上げてしまうのは本当にすごい!
後半はYouTubeをやってきたこと、現代の音楽活動に関して
こうして一連の作業の流れを見せてくれた後、
今度はピートがYouTubeに取り組むようになったきっかけとその後の人生の変化について語ってくれました。
2006年、YouTubeチャンネルを立ち上げたけどなにしたらいいかわからない。
そこで思いついたのがVAN HALENのERUPTIONという超有名曲の完コピ、弾き方動画。
ちなみに、実はこのときVAN HALEN本人が超近所に住んでたらしいww
こうしてYouTubeに動画をアップロードしてからあるとき別件でポルトガルに赴いたところ、
リスボンの街中で
「お前!ERUPTION野郎じゃん!」
と声をかけられたそうです。
間に特になんの業者もなく、誰が彼の元に届けたでもなく、
直接世界中の人にリーチ出来る、そのことに気付いてからYouTubeにやりがいを感じ始めたそうです。
そしてこう続けてくれました。
「それを続けて来たからこそ今もこうして東京でクリニックができてるし、
現代では自宅のPCとギターだけで曲を完成させてすぐにYouTubeなりiTunesなりSpotifyなりで配信出来る。
あなたがギター上手かどうか昔はレコード会社などの”他の人”が決める時代だったけど、
今は自分で自分の運命を切り開ける時代になった。
同じことをできない人は今この部屋に誰もいないから、
もしみんないいアイディアがあって全力で頑張れるなら、(日本の人の頑張る姿勢はすごいから)わたしみたいになれるよ。
あなたを若すぎるとか遅すぎるとか言う人は誰もいないから。」
と締めてくれました。
もうね、会場中みんな惚れてましたね。
素晴らしい。
最後に質問コーナー
全てのお話を終えて、最後に会場からの質問コーナーを受け付けてくれました。
ミックスについて、フレーズ選びについて、機材について、ギャラについて(笑)などなど、
自分の理念や体験だったり
「その点ジミー・ペイジはこういうとこすごいよね」
とかみんなもすぐに思い浮かぶような例をあげてくれたり、
話が面白いしなんでも答えてくれるもんだからみんなからドンドン質問が出て来て、
結局45分くらい質問コーナーやってくれました!!
まとめ:ピートソーン氏、これからも躍進間違いなし!
なんか、こんなに大満足な2時間クリニックってあまりないと思う。
だって、忘れないでくださいね、これ通訳通してるんですよ?
つまり喋る時間は全部が倍になってるわけで、
わたしは英語4割くらいしか聴き取れなかったので、
ほぼ通訳さんの言葉を聴いて楽しんで、そしてこの記事もそれを辿りながら書いています。
それでこのボリュームよ!
話の上手さ、構築の巧さ(さすがYouTuber!)、
センスや実力はもちろん素晴らしかったけれど、結局はこの人柄だよなぁ。
ぶっちゃけわたしはピートソーン氏のことYouTubeでちょっと見たことあるくらいだったけれど、
この2時間のクリニックでもう大好きになっちゃったから。
終演後にピート氏が手売りでCD持って来てたけど、本当に、本当に全員並んで買ってた!
そんなことあるのかってくらい、関係者入場した人たちもみんな普通に並んで買ってた!
そりゃ人気も出るわけだよ。
みなさんも是非、Pete Thorn氏のYouTube、チャンネル登録よろしくお願いしますwww
Pete Thorn YouTubeチャンネル
それでは、最後まで読んでくれてありがとう!
萩原悠(Twitter→@hagiwarau)でした!