– これまでのあらすじ –

大学生しながら割と学外の方との繋がりの中で制作する機会も多かったためそんなに学内にいることもなかったのですが、

あるとき、バイト募集の張り紙を見つけます。


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KORG


Prof 44
貼ってあったのはKORGという電子楽器メーカーのデバック要員の募集。

KORG本社は京王よみうりランド駅

(ショールームは誰でも無料で入れるので是非!)
Prof 43

学校が溝の口で自宅が立川方面だったのでまぁ通り道と言えなくもない。

レッスンを担当してくださっていた先生も是非やってみたらいいと勧めてくださったので、

とりあえず面接に。

そして、なんと受かりました。

結構あちこちの学校やスタジオに貼ってあったみたいですが、

実際に採用になったのは僕ともうひとり、全部で二人だったようです。

デバック


デバックとは、プログラムのバグや欠陥を見つけ出し修正することで、

僕の仕事は、これから発表になる新製品シンセサイザーをひたすらいじくりまくって出来るだけ多くのバグを見つけること。

あんな使い方をしたら音が止まる、

こっちのメニューに数字が反映されてない、

このモードだけリバーブがかからない、

鍵盤を連打しまくったらバグるなどなど、

とにかくあらゆる使い方をして新製品をバグらせるというお仕事でした。


KORG / PS60


PS60 02
もう過去の話ですし守秘義務とかいいですよね、初めて書きます。

わたしが担当したのはKORGPS60というシンセサイザーでした。

今までのシンセサイザーとは音を選択するシステムが大きく違う、簡単にライブで演奏が出来るという面白い製品でした。

まぁ、流行らなかったけれどorz


同じバグを何度でも出さないといけない


バグる、というと、なんかめちゃめちゃにやってたらピゴーーーとか壊れた状態を想像するかもしれませんが、

僕の仕事はそうではなく、

「この手順でこうやると必ずこのように不具合が起こります」

という報告をすること。

つまり、一度バグったらそのバグを何度でも出せるように検証しなきゃいけなくて、どういう状況だとそのバグが起こらないのかも報告が必要です。

“電源を立ち上げてからすぐにリバーブをかけたままピアノ01の音からオルガン03に切り替えたらリバーブがかかりません。リバーブではなくディレイなら大丈夫です。
ピアノ02からオルガン03やピアノ01からオルガン01などもリバーブに支障はありません。電源立ち上げて数分待っても症状は変わらず、[最初にリバーブをかけたとき]だけに起こります。先に一度リバーブをオンオフしておけば起こりません。”

みたいな検証をしなきゃいけなくて。(実際はもっとちゃんとしたフォーマットに沿って報告するぞ)

だからバグが出ないのもツラいし、出たら出たで

「やべ、待って、今なにやってたっけ、これの前どこのモードにいたっけ……」

みたいな検証が始まります。

誰と話すわけでもなく黙々と。

もちろんやりがいはあったけれど、あれは一種の地獄だったと思う。


一通りのDAWソフトを習得


この時代あたりから、シンセサイザーがパソコンと、DAWソフトと連携して使えるようになってきて、

つまりはそのエディターとかのチェックもしなければなりません。

そう、全ての主要DAWソフトで。

おかげでこのときに
  • Pro Tools
  • CUBASE
  • LOGIC
  • SONAR
  • Digital Performer
  • Singer Song Writer
  • Live

あたりは使えるようになりました。(Studio Oneはどうだったかなぁ。)

のちに台湾でCubaseを使ってレッスンすることになるので、このときに使っておいて本当によかった……。

後半はツラい


PS60 01
発売日が近づくにつれて、どんどん辛くなって来ます。

それは、バグが治りきらないからではありません。

バグが、出ないんです。

もうこれまでの作業でバグを見つけきっちゃったのか、

簡単には不具合に出くわさなくなり、

1日働いててもバグが全く出ないんです。

となると、丸一日働いてないのと同じじゃないですか。

やべぇ、今日自分出社して、給料もらって、なんの報告も出来なかった……。

後半はそんな日が続きます。

バグが出ないってことは完成度が上がって来ている、喜ばしいのだけれど、

でもなんだか、自分が今日もここに来てちゃんと仕事した、給料を払うだけに値する存在だったと思われたくて、

なんだか必死でした。


無事リリース


2010年4月、無事にリリースされました。

それと同時に自分も任期満了ってことで退社してしまったのでその後の反応がどうだったかとかは知りません。

が、立川や新宿の楽器屋さんでPS60を見る度になんだかすごく嬉しくて、ニヤニヤしながら触ったことを覚えています。

製品が発売されてユーザーの手に渡る前にあんなに時間かけてバグを取っていくんだということも初めて知って、

世の中の仕組みの一部を垣間見れたこともとても勉強になりました。

持ち前の揚げ足取り気質とこのときの経験から、

今でも僕は誤字脱字のチェックなどがめっちゃ得意です。

ここだけフォントが半角ですよ?

アラビア数字と漢数字が入り混じってますよ?


もう得意すぎるwww

皆さんフライヤーデザインとかを入稿する前に僕に見せてみてはどうでしょうか?ww

ってことで今回はこのへんで。

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